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名古屋市立大学
田口和己
受賞年月 2015年08月
この度、2015年8月28日~29日にかけてロワジールホテル旭川にて開催された日本尿路結石症学会総会・学術集会にて、第10回学会賞を受賞しましたので、報告させていただきます。
受賞論文は『Colony-Stimulating Factor-1 signaling suppresses renal crystal formation. J Am Soc Nephrol. 2014; 25(8): 1680-1697.』です。抗炎症性マクロファージ走化因子であるColony-Stimulating Factor-1 (CSF-1)による腎結石抑制効果に着目したものです。CSF-1遺伝子の欠損したマウスでは、腎組織マクロファージの中でも抗炎症性のM2が少なくなっており、その結果、炎症性ケモカイン・サイトカインの発現が高く、腎結石の形成が増加していました。このマウスに、CSF-1を外的補充すること、骨髄細胞から分化培養して得たM2を経静脈的に投与することで、ともに腎結石形成を抑制することができました。さらにin vitroの実験系では、尿細管上皮細胞や他のマクロファージと比べて、M2が結晶を貪食する作用が強いことを見出しました。
尿路結石の治療は、外科的治療が近年の内視鏡技術の発展とともに増加しているのに対し、再発予防などの内科的治療はあまり発展がみられない現状があります。今回の研究で得られた知見は、M2の結晶貪食および抗炎症作用に着目した「結石溶解治療」へと発展できるものだと考えています。現在、このM2をより効率よく誘導するための基礎研究と、尿路結石症患者におけるマクロファージ関連遺伝子の発現を調べる臨床研究を行っており、今回の基礎研究の成果を実臨床に向けて応用できるよう、発展させていきたいと思います。
[掲載日:2018年12月]
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この度、2015年8月28日~29日にかけてロワジールホテル旭川にて開催された日本尿路結石症学会総会・学術集会にて、第10回学会賞を受賞しましたので、報告させていただきます。
受賞論文は『Colony-Stimulating Factor-1 signaling suppresses renal crystal formation. J Am Soc Nephrol. 2014; 25(8): 1680-1697.』です。抗炎症性マクロファージ走化因子であるColony-Stimulating Factor-1 (CSF-1)による腎結石抑制効果に着目したものです。CSF-1遺伝子の欠損したマウスでは、腎組織マクロファージの中でも抗炎症性のM2が少なくなっており、その結果、炎症性ケモカイン・サイトカインの発現が高く、腎結石の形成が増加していました。このマウスに、CSF-1を外的補充すること、骨髄細胞から分化培養して得たM2を経静脈的に投与することで、ともに腎結石形成を抑制することができました。さらにin vitroの実験系では、尿細管上皮細胞や他のマクロファージと比べて、M2が結晶を貪食する作用が強いことを見出しました。
尿路結石の治療は、外科的治療が近年の内視鏡技術の発展とともに増加しているのに対し、再発予防などの内科的治療はあまり発展がみられない現状があります。今回の研究で得られた知見は、M2の結晶貪食および抗炎症作用に着目した「結石溶解治療」へと発展できるものだと考えています。現在、このM2をより効率よく誘導するための基礎研究と、尿路結石症患者におけるマクロファージ関連遺伝子の発現を調べる臨床研究を行っており、今回の基礎研究の成果を実臨床に向けて応用できるよう、発展させていきたいと思います。
[掲載日:2018年12月]