研究紹介

排尿研究グループ

はじめに

排尿は、日常生活と切り離せない非常に重要な生理現象です。この機能が障害されると、尿勢低下や頻尿などが生じ、生活の質が低下します。排尿機能には、尿をためる蓄尿機能、尿を排出する排出機能があります。蓄尿機能は主に膀胱の知覚の問題が関与し、排出機能には膀胱の収縮力や前立腺肥大症による膀胱出口部の閉塞などが関与します。
私たちは、患者さまのQOLの向上を目指し、蓄尿障害、排出障害の両方の観点について、基礎研究、臨床研究をすすめています。

膀胱機能について

蓄尿障害の原因となる主な疾患に、過活動膀胱があります。過活動膀胱は、膀胱の知覚が亢進し、不随意収縮を引き起こし、強い尿意切迫感や尿失禁が生じる疾患です。膀胱の過剰な収縮を押さえる抗コリン薬やβ3刺激薬が治療に用いられますが、その効果は十分ではありません。過活動膀胱の病態には様々なメカニズムが報告されていますが、私たちは膀胱の自動運動に着目をし研究を行ってきました。消化管での自動運動に関与するカハールの間質細胞(ICC)に着目し、膀胱でもICCに似た細胞が発現していることを明らかにしました。さらに、ICCに発現するKIT、そのリガンドであるSCFの膀胱における役割について検討してきました。この結果を臨床に応用し、過活動膀胱の新規バイオマーカー、治療薬の確立を目指しています。
(Kubota Y, Hamakawa T, et al. Neurourol Urodyn. 2018)
(Kubota Y, et al. Adv Urol. 2011)

前立腺肥大症について

高齢男性の排出障害の主な原因は前立腺肥大症です。40代頃から患者数が増加し、60代男性の6%、70代男性の12%に生じる、頻度の高い疾患です。その発症要因には男性ホルモンや交感神経系の関与が指摘されていますが、詳細な機序は不明です。これまでに私たちは、前立腺細胞の増殖にKITの発現が関与していることを報告してきました。さらに、新たに開発された泌尿生殖洞移植による前立腺肥大症モデル動物を用いて、前立腺肥大症の発症における炎症性サイトカインIL-18とTSP-1の関与を明らかにしました。これらの結果を臨床に応用し、前立腺肥大症の進行予測や治療選択の目安となるバイオマーカーの確立を目指し研究を行っています。
(Imura M, Kubota Y, Hamakawa T, et al, Prostate. 2012)
(Hamakawa T, Yasue K, et al. Prostate 2014)

男性尿失禁の治療

近年、前立腺癌の患者数が増加しています。それに伴い前立腺癌に対する手術件数の増加しています。前立腺癌手術後には数%の方に重度の尿失禁が生じるとされています。このような方に対して人工尿道括約筋埋込術が最も効果的な治療法です。当科では平成25年3月から本手術を施行しております。前立腺癌術後以外でも、尿道括約筋に原因がある尿失禁でお困りの患者さまのQOLの改善の目指し、治療を進めてまいります。

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