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受賞・助成金レポート

2015 受賞報告

西尾英紀先生 第24回日本小児泌尿器科学会総会 学会賞(基礎部門)

名古屋市立大学

西尾英紀

受賞年月 2015年07月

この度、第24回日本小児泌尿器科学会総会(平成27年7月2日;東京都千代田区)におきまして、学会賞(基礎部門)を受賞しましたので、ご報告申し上げます。演題名は『ヒト停留精巣における造精機能障害のメカニズムの解明 ~ヒストン脱メチル化酵素KDM5Aを用いた組織学的検討~』です。

停留精巣は、高温環境や酸化ストレスなどの要因で造精機能障害を来たし、将来の妊孕性低下を引き起こす疾患です。原因として様々な遺伝子の報告がありますが、全容は明らかではありません。そこで、停留精巣における造精機能障害の機序について研究しようと考えました。

当教室で確立した停留精巣モデルラットを用いて、ラット停留精巣では、未分化精細胞から精子幹細胞である精原細胞へ分化する初期の精子形成過程に障害が起こり、同時期に停留精巣で発現が亢進するKdm5a遺伝子を同定しました。Kdm5aはヒストン修飾を介したエピジェネティックな遺伝子発現制御を行うことが報告されています。様々な遺伝子発現を制御しているDNAは、ヒストンタンパクに巻きついてクロマチンを形成し、これらが折り畳まれて染色体となります。Kdm5aはヒストンタンパクの脱メチル化作用を有しているため、ヒストンタンパクを脱メチル化する(ヒストン修飾)ことで、クロマチンの立体構造を変化させ、遺伝子発現の制御を行います。

そこで本研究では、ヒト停留精巣におけるKDM5Aの発現について検討しました。そして、ヒト停留精巣においてKDM5Aの発現が亢進することで、ヒストン修飾を介して精子幹細胞分化が抑制され、造精機能障害が引き起こされる可能性が考えられました。安井孝周教授をはじめ、先天異常グループの林祐太郎病院教授、水野健太郎講師や、当教室の先生方から多大なるご指導を賜りました。今回の受賞を励みに研究を継続し、本学会のテーマである「医学から医療へ」のように、将来、臨床の場に還元できるよう精進して参ります。

[掲載日:2018年12月]

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